あおい小児科院内勉強会

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自分を変える、勇気を与えてくれるアドラー心理学

平成29年9月の定例勉強会(平成29年9月14日開催)

 9月2日に開催された日本外来小児科学会で、「アドラー心理学を学ぶ」ワークショップに参加した際に使用した資料をもとに、勉強会を行いました。

アドラー心理学とは…

「人はどうすれば幸せに生きることができるのか」という問いにシンプルかつ具体的な“答え”を提示します。

「人間の悩みは、すべて対人関係の悩みである」その悩みから脱却するカギは自分が握っている。自分が変わることで悩みを解消することができます。

自分を変えるための5つのキーワード

①課題の分離 … 自分は変えられる。他者は変えられない。
②承認欲求の否定 … 他者にどう思われようと自分の価値は変わらない。
③認知論 … 人は皆「主観」という眼鏡を通して世界を見ている。
④目的論 … 問題の原因ではなく、目的に焦点を当てる。
⑤自己決定性 … 自分の人生をどう歩むかは自分が決められる。

すべてに共通しているのは「人は変われる」という前向きな思考です。
5つのキーワードを通して人生の課題を克服し、他者を仲間と見なし、見返りを期待せず、他者からの評価を気にせず、他者に貢献する。そうすることで、人は幸せになれる。
これを「共同体感覚(=人と人が結びついている状態)」と呼び、アドラー心理学が目指すゴールです。

「人間は置かれた環境によって変われないのではなく、自らの意思で「変わらないでおこう」と決心している。いま幸せを実感できていないのなら、現状を変えることの「不安」を乗り越え、自分を変えるしかない。人は「変わろう」と決心した瞬間から、もはや過去の自分ではなくなる。その決心を下すのは自分だ。」

(『嫌われる勇気』特別編)

自分を変えるのに必要なのは、ほんの少しの“勇気”
アドラー心理学で「勇気」を持つことで、人は変われる!未来も変わる!!

アドラー心理学の5つのキーワード

①課題の分離

「これは誰の課題なのか?」という視点から変えられるもの(自分の課題)と変えられないもの(他者の課題)を分離する。

例)親が何度注意しても、子どもが勉強しない。
     ↓
誰の課題なのか?課題の結末を引き受けるのは誰か?
     ↓
勉強をしなかったことで、希望の学校に入れないなどの結末を引き受けるのは子ども自身。
     ↓
子どもの課題である。
     ↓
子どもの課題(他者の課題)である以上、親が子どもに注意することは他者の課題に土足で踏み込むことであり、口出しすべきでない。親は子どもに、助言や提案、交渉はしても、最終的に決断するのは子ども自身である。
もし親の言う通りにして、失敗した時、子どもは自分の決断に責任が持てず、親のせいにしたり、直面している問題に向き合えなくなる。

他者の課題に踏み込まず、他者を自分の課題に踏み込ませないようにすることが大事

②承認欲求の否定

人にほめられたいという「承認欲求」を持ち続ける限り、自分がしたいことはできない。

他者からほめられたい(承認欲求)
     ↓
ほめられるように行動する
     ↓
ほめられる=成功、ほめられない=失敗、と考えるようになる。
     ↓
ほめられるために行動するようになり、他者の期待を満たすために生きるようになる。
承認欲求を否定することで、他者の期待を満たすためではなく、自分の信じる最善の行動をとることができる。

他者に認められたいと思い続けるかぎり、自分の生き方を貫くことはできない。
自由とは、他者から嫌われること。

③認知論

人は誰しも「客観的」な世界ではなく、自ら意味づけを施した「主観的」な世界に住んでいる。

同じものを見ているのに、サングラス(=主観)が違うため、どう認知するかは人によって異なる。

例)人より背が低くてバカにされている

劣等感は「客観的事実」ではなく「主観的解釈」
身長が低いとういのは客観的事実だが、「バカにされている」というのは主観による思い込み。

人は自分の主観から逃れることはできない。
しかし、主観は自分の手で変えることができる。

④目的論

人間の行動は過去の経験など、外的要因によって決定される(原因論)のではなく、自分の目的に従って決定される(目的論)

目的論は責任転嫁を許さない。現在直面している問題は、過去のトラウマや、他者のせいではなく、何らかの目的をかなえるために自分で選んだ結果である。

重要なのは、何が与えられたかではなく、与えられたものをどう使うか

⑤自己決定性

人生をどう歩むかは自分の意思で選びとっている。つまり、自分次第で人生は変わり得る。

アドラー心理学は、育ってきた環境やハンデなどが性格形成に影響を与えることは認めています。ただ、それらの影響をどう解釈し、そこからどう態度を決めるかは自分次第。
最終的にその人の性格を決める要因は、その人自身だととらえています。

《判断基準は建設的か非建設的か》
  • 困難に出会ったとき、「よい」「悪い」、「正しい」「間違っている」で判断するのではなく、「自分と他者にとって建設的な方向か、それとも非建設的か」で判断することが重要である。
  • この判断基準を使うと、誰かを悪者扱いしたり、人のせいにすることがなくなる。
  • 自分の決断に責任がもてる。

これまでの人生に何があったとしても、
今後の人生をどう生きるかについて何の影響もない。
今後の人生を決めるのは、現在の自分。

共同体感覚

人は全体の一部であり、全体の中で生きている。
家族・地域・職場・国・世界などの中で、「自分はその一員なんだ!」という感覚をもっている状態のこと。「居場所がある」「信頼できる」「役に立てる」と思える場で生きることが人の幸せだと考える。
アドラー心理学が目指すゴール。(=対人関係のゴール)

《共同体感覚をもつために必要なもの》

①自己受容
 ありのままの自分を受け入れ、自分の存在を認める。短所も長所として考える。
②他者貢献 
 自分が何らかの形で、他者(社会、職場など)に貢献していると思うこと。
③他者信頼
 他者の存在を受け入れ、仲間だと思うこと。

他者を信頼し、貢献感を得るためには、対等な横の関係を築くことが重要です。
役職、年齢や経験、得意分野、引き受けられる責任の量など、人によって違いがあり、それらの違いに応じて異なる役割が与えられること、待遇面に違いが出ることは当然。
しかし、それは立場や役割の違いであって、人間的な価値に差があるわけではありません。
私たちは「同じではないけれど、対等」なのだということです。
たとえ、大人と子どもであっても。

対等な関係を築くためには、「ほめても、叱ってもいけない」
必要なのは「勇気づけ」です。

「ほめる」「叱る」は上から下に使う言葉

  • ほめ言葉は、一見よいメッセージのように思えるが、じつは相手に対して評価をするような態度、上から目線で相手を下に見て発するメッセージにあたる。
  • 言われた相手は次第に、ほめられないとやらない、ご褒美がないと動かないという人になってしまう可能性がある。
    「えらいじゃない」「よくやったね」など。

「評価」されるのではなく「感謝」されると、ひとは「自分は誰かの役に立っている」という貢献感を得ることができます。自分は役立たずの人間ではなく、他者に、社会に貢献しうる存在なのだと実感できる。その内発的な実感だけが、本当の自信を生む。こうしたアプローチを「勇気づけ」といいます。

「勇気づけ」の言葉

  • 困難を克服する活力を与える。(課題に立ち向かえるようにする)
  • 尊敬、信頼、共感がベースになっている。(対等にみる)
  • 相手が自分から動くようになる。(貢献感が得られる)
    「○○さんの願いがかなって私もうれしい!」
    「あなたのサポート、とても助かったよ!」
    「~してくれてありがとう!」

担当スタッフの感想

 「嫌われる勇気」の著者、岸見一郎先生から直接お話しや、質疑応答を聞くことができ、意義深いワークショップでした。
 「これまでの人生に何があったとしても、今後の人生をどう生きるかについて何の影響もない。今後の人生を決めるのは現在の自分だ」という考えに、とても感銘を受けました。これまでの子育てや、人間関係の悩みも、今からでも変えられると思うと少し気持ちが楽になりました。
 幸せについての考え方は、人それぞれ違います。アドラーの考えがすべて正しいわけではありませんが、こんな考え方もあるということを知っておくことで、悩んだ時の手助けになるのではないかなと思います。

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