あおい小児科院内勉強会

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本当にあったまさかの事故 ~最近の事例報告より~

平成28年11月の定例勉強会(平成28年11月10日開催)

 近年発売されている育児グッズや身近な食べ物などが原因となった不慮の事故について、日本小児科学会および国民生活センターのホームページから、興味深いケースをピックアップして報告しました。

症例1 熱さまし用ジェル状冷却シートによる窒息事故

事故がおきたこども
発熱した生後4か月男児
事故の状況
額に熱さまし用ジェル状シートを貼り付け看護中、夕食の後片付けのためしばらくそばを離れたのち戻ったところ、冷却シートが男児の口と鼻をふさぎ、窒息状態になっていました。
結果と可能性
脳に障害が認められ、将来にわたり全介助が必要なほどの重度な障害が残る可能性が極めて高いです。
国民生活センターからのアドバイス
何らかの原因で冷却シートが額から外れ、口と鼻を覆い窒息する可能性があることを知り注意しましょう。
院長からのコメント(具体的な対応策)
顔が何かにおおわれた時子ども自身がそれを取り除くことができる年齢になるまでは、顔をおおう可能性のあるものは近くに置かない、使わないようにするべきです。

症例2 ブドウが誤って気管に入った事故

事故がおきたこども
ブドウを初めて食べる1歳6か月
事故の状況
父親がブドウ(巨峰、種無し)の皮をむき、丸ごと1個を子どもの目の前に置いたところ、子どもが自分でブドウを手に取って口に入れた直後に顔面蒼白、唇が紫色になり、父親が背部を強打するものの変化がないため救急車を要請しました。
結果
脳死とされる状態になり、約3か月後に死亡しました。
こどもの生活環境改善委員会からのコメント
窒息を引き起こす果実類としては、ミニトマト、リンゴ片、ブドウなどが知られており、消防庁や救命救急センターからの報告では、食品による窒息死の7~10%が、果実で占められています。
乳幼児は歯で嚙み切る、臼歯ですりつぶす機能が未熟であることが大きな要因であると思われます。一口サイズで吸い込んで食べるものは、リスクが高いので具体的には5歳未満の小児に対しては、ブドウやミニトマトなど、ある程度の硬さがあり、球形で外表がスムーズで口腔内を滑りやすい果実や野菜を食べさせるときは、1/4以下の大きさに切って与える必要があるでしょう。
院長からのコメント(具体的な対応策)
ブドウに限らず、丸くてつるっとしたある程度の大きさがあるものは、5歳以下の乳幼児期には与えるべきではありません。どうしても与えたいときは、スライス状に3~4切れに切って与えてみるといった工夫が必要です。

症例3 浴槽用浮き輪による溺水

事故がおきたこども
9か月(2人)、8カ月(1人)
事故の状況
母親が洗髪中、あるいは1~2分着替えを取りに離れた間に、浴槽に浮かんでいたり、沈んでいたりしました。
結果
3人とも後遺症などありません。
こどもの生活環境改善委員会からのコメント
この浮き輪は、座るようになっているため、乳幼児の重心の位置が高くなる子供の頭が前方、あるいは後方に移動すると、容易に前方あるいは後方に転倒します。
いったん転倒すると、元の位置に戻ることが出来ず、溺水となる可能性が高く溺死例も報告されています。
保護者と一緒に入浴する以外にも使用される可能性がある危険性が高い商品であり、保護者にはこの商品を使用しないように勧告しています。
院長からのコメント(具体的な対応策)
浴槽用浮き輪は確かにお風呂に入れる時には便利なグッズかも知れませんが、子育てに必要不可欠なグッズではありません。事故になった時の重大性を考えると使用すべきではないでしょう。

※首浮き輪でも、溺水の症例報告もあります。

担当スタッフより

 大人からすれば大したことない大きさや深さでも、子どもにとっては、死亡事故につながるような事にもなりかねません。
 今回掲載した事例に対するアドバイスやコメントを参考にして、たとえば必要ない物は使わないとか、大変かもしれないけれどひと手間かけて小さくして食べさせるなど、それぞれの家庭で話し合ってみてはいかがでしょうか。(看護師 別府)

院長より

 これらの事例をみると熱さまシートやブドウなど子どもの身近にあるものが原因となり取り返しのつかない事故に至っているのがわかります。

 不慮の事故で子供が死亡する、あるいは後遺症を残す事態になると、その親ごさんにとっては、一生悔いを残すことになり辛い人生を歩むことになります。そうならないためにも子どもにかかわる大人は、まずこのような事例があることを知るのが第一です。そして、その事例に対して事故を防ぐにはどうすればいいのか、家族みんなで考えるようにしてみましょう。

 不慮の事故の事例集は、日本小児科学会、国民生活センターのホームページに掲載されています。ぜひご覧ください。
日本小児科学会のホームページ
国民生活センターのホームページ

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