今も現役!結核って何?
平成28年10月の定例勉強会(平成28年10月12日開催)
学校や職場で年に1回行われている結核健診。どうして必要なのか考えた事はありますか?
今回は院内感染対策研修として知っているようで、実はあまり知らない「結核」について勉強会を行いました。
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平成28年10月の定例勉強会(平成28年10月12日開催)
学校や職場で年に1回行われている結核健診。どうして必要なのか考えた事はありますか?
今回は院内感染対策研修として知っているようで、実はあまり知らない「結核」について勉強会を行いました。
結核とは「結核菌」という細菌が直接の原因となって起こる病気です。
結核菌は肺に巣食うことが多いのですが、人体のいろいろな臓器にも病気を起こします。
結核に感染しても、必ず発病するとは限りません。
発病するのは10人に1~2人くらいといわれています。残りの8~9人は、個人が持っている免疫の力によって結核菌は眠ったままの状態になります。
感染してから発病までの期間が長く、発病する人の約50%はおおむね6カ月~1年の間に、約80%はおおむね2年以内に発病します。
また、その後の発病の危険性は0になることはなく、長期間経過してから、免疫力が落ちて発病することもあります。現在、高齢者に結核が多いのも、このような状況によります。
結核は、現在でも1年間に4万人以上の患者が発生する、我が国では最大の感染症です。
大正、昭和の前半までは、結核死亡が我が国の死因第1位でした。その後、徐々に減少し、平成27年の結核による死亡数は、1,955人(概数)で、前年から145人減少しました。死亡率は、1.7から1.6に、死因順位は26位から29位になり、いずれも前年より低下しています。(表1)
年代別では、60歳以上の高齢者の感染者が60%以上を占め、20~59歳の働き盛りがほぼ残りを占めています。(表2)
現在も、結核集団発生や、院内感染など、緊急に対応を図らなければならない課題も大きく、都市部では若い働き盛りの結核死亡もみられます。結核は決して昔の病気ではありません。
表1.結核の死亡数及び死亡率の年次推移
表2.年次別・年齢階級別新登録結核患者数
出典:「平成27年 結核登録者情報調査年報集計結果」(厚生労働省)(http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000132952.html)
感染者の、咳やくしゃみで飛び散ったしぶきの中の結核菌を吸い込むことで感染します。(飛沫感染、空気感染)
結核菌は体外に出ると、日光の中の紫外線で死滅するので、そばにいる人に対して感染することが多く、食器などの物を介して感染することはありません。
症状は風邪によく似ています。咳、痰、血痰、胸痛、発熱、倦怠感など。
弱毒化した結核菌を接種して、軽い結核のような反応を局所に起こさせておき、本当の結核菌が後からきた場合に、対抗する免疫をつけておく、というのがBCG接種のねらいです。BCGは、特に子供の結核予防に有効なことが証明され、しかも、最も安全な予防接種として広く用いられています。
結核に感染した人の家族や親しい人は、同じように感染した可能性があるので、検査が必要です。また、結核に感染して長期間眠っていた菌が、何十年経って体の抵抗力が衰えた時に、再び発症することもあるので注意が必要です。
特に、糖尿病をもっている人や、人工透析をしている人のほか、ステロイド剤などの免疫製剤による治療をしている人、HIV感染者も免疫力が落ちて、発病しやすくなるため、注意が必要です。
大人の場合は「子どもの頃にBCGを接種しているから大丈夫だろう」と考えたいところですが、BCGの効果は、十数年程度しかもちません。そのため、大人にとっては、BCGで結核の発病を予防する効果は期待できません。
大人になって、もう一度BCG接種をしたらどうか…となりますが、成人になってBCGを打った場合の効果は証明されていないため、成人のBCG接種は推奨されていません。BCGは、現実的には、重症化を防ぐことが目的であるため、重症化しやすい乳幼児に対してこそ価値があるのです。
大人の場合は、まず免疫力低下を防ぐことが重要です。
つまり、健康な体を維持するために、栄養、睡眠、運動に気をつけることがポイントになります。
以下のような基本的なことに気をつけましょう。
結核を早く見つけることは、本人の病状が重くなるのを防ぐためにも、周囲へ結核をうつさないためにも大切なことです。
そのために、年に1回検診を受けること、咳や痰が2週間以上続くようなら、早めに病院を受診することが大切です。
結核の集団感染については、時々ニュースで報道されることがありますが、年間でこれほどの人数が感染しているという事実に驚きました。
また、重症化しやすい5才未満の乳幼児も、毎年30人前後感染しています。
子どもを守るためには、BCG接種をすることはもちろんですが、周囲の大人は、定期検診をきちんと受け、子どもにうつさない努力をしなければならないのだと思います。
戦前は、子ども(とくに乳幼児)が結核にかかると髄膜炎から重い脳障害をおこしたり全身型の結核になって死亡するなど結核はとても怖い病気でした。今では治療薬が進歩し子どもの栄養状態や衛生環境も改善して結核は以前のように怖い病気ではなくなりましたが、いまでも国内で持続的な発生があり過去の病気ではありません。われわれ小児科医もその存在を忘れないようにしないといけません。
また平成17年4月から事前にツベルクリン反応をしないでBCGの直接接種が実施されるようになりました。これは結核にかかる子どもが非常に少なくなったことによります。すなわちツベルクリン反応をしてもほとんどの子どもが陰性(結核にかかっていない)と判定される一方で、陽性となる子どもは大部分が疑陽性(結核にかかっていないのに陽性と判定される)で、その子どもたちはBCGを受ける機会を失ったり、必要のない抗結核剤を投与されるなど不利益をこうむることが大きくなったためです。現在ではBCGは1歳までに定期接種として接種をすることになっています。