知って予防しよう!乳児ボツリヌス症
平成29年6月の定例勉強会(平成29年6月8日開催)
今年の2月に、生後5ヶ月の乳児がボツリヌス症で亡くなるという痛ましいニュースが報道された事を受けて、乳児ボツリヌス症についての勉強会を行いました。
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平成29年6月の定例勉強会(平成29年6月8日開催)
今年の2月に、生後5ヶ月の乳児がボツリヌス症で亡くなるという痛ましいニュースが報道された事を受けて、乳児ボツリヌス症についての勉強会を行いました。
ボツリヌス症はボツリヌス菌等が生産するボツリヌス毒素によって神経麻痺性の中毒症状がおこる疾患です。
ボツリヌス菌は、土の中や川、海、家の中の埃、風呂場など自然界のどこでもある菌です。この菌は熱に強く、低酸素状態に置かれると毒素を産み出します。この毒素が「ボツリヌストキシン(ボツリヌス毒素)」と呼ばれるものです。
1歳未満の赤ちゃんは、ミルクや母乳など栄養価の高い食事をとっていることと、まだ十分に腸内環境も整っていないことから、ボツリヌス菌が腸内で発育・増殖しやすい状況にあるために症状を引き起こします。
1歳になれば腸内環境も成熟するので、はちみつ程度のボツリヌス菌では発症することはなくなります。乳児ボツリヌス症の94%は生後6ヶ月未満の赤ちゃんで、症例の最高月齢は11ヶ月の乳児です。
乳児ボツリヌス症は、1986年より36例の報告があり、死亡例は国内初です。1987年から厚生労働省より、1歳未満の乳児に蜂蜜を与えないようにと注意喚起されていました。
原因食品と共に摂取されたボツリヌス菌は、毒素を産生しボツリヌス症を引き起こします。ボツリヌス菌の芽胞は、大人が食べても害はありません。
原因食品としては、はちみつ以外にも黒糖、コーンシロップ、自家製野菜ジュース、井戸水などに菌がまぎれている可能性があります。
意外と見落としがちなのは、原材料にはちみつが使用されたスイーツ類、パン、ジュースなどです。
*すべてのはちみつにボツリヌス菌が含まれているわけではありません。(まぎれている可能性は約5%と言われています。)
潜伏期間:3~30日
乳児ボツリヌス症の最初の症状として、5日以上続く便秘
活気がない・哺乳不良・泣き声が弱い
さらに筋緊張低下
よだれが多い・首のすわりが悪くなる・眼球運動の麻痺
ゆっくりした呼吸
最終的には症状がひどい場合、呼吸不全に陥る
赤ちゃんが食べた原因食品や、便・血液からボツリヌス毒素が検出されることで診断されます。
治療としては、呼吸管理や輸液をして症状を軽減させる対症療法、近年では、抗体を投与する集中治療を行います。
病院できちんと治療を受ければ、後遺症もなく完治することがほとんどです。乳児ボツリヌス症の死亡率は、1~3%です。
1歳未満の赤ちゃんにはボツリヌス菌の危険性がある食品をあたえない!
はちみつのほかにも黒糖、コーンシロップ、自家製野菜ジュース、井戸水などは、ボツリヌス菌の芽胞が混入している可能性があるためあたえないでください。
原材料にはちみつが使用されたスイーツ類、パン、ジュースなどもありますので注意してください。
はちみつや黒砂糖を1歳未満の乳児に与えてはいけないと知っていましたが、実は他にも乳児ボツリヌス症の危険性がある食品があることを知って驚きました。
乳児の腸内は未発達状態なので、家族の方も様々な事に気を付けておられると思いますが、世代間で育児についての常識が違っています。それに伴って乳児ボツリヌス症についての認識にも差があるので、子育てに参加している方全員で話し合い、周知してもらうことが大切ではないかと感じました。